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保健 Health

貧困と疾病(ill-health)の悪循環克服に向けて

バングラディシュの母子保健研修所
バングラディシュの母子保健研修所
バングラディシュの母子保健研修所発展途上国の開発において保健は基本的かつ重要なテーマの一つですが、保健の定義そしてその目的は漠然としたイメージとして捉えられがちです。

健康(health)とは、世界保健機構(WHO)から引用すると、「肉体的、精神的、そして社会的に良好な状態」と定義されます。そして途上国開発における保健(health)分野とは、そのような状態を実現するために必要なあらゆる要素を包含しています。保健は様々な側面を含むため、関連する学問的分野も多岐にわたります。具体的には、疫学、生物学、公衆衛生学など基礎医学的な分野や臨床医学、そして人口学、経済学などがあり、また途上国の保健医療問題を学際的に取り扱う分野としては、国際保健医療学などもあります。
発展途上国の保健に対する国際的支援において、その理念的転機となったのがプライマリー・ヘルス・ケア(Primary Health Care: PHC)という概念を打ち出した1978年のアルマ=アタ宣言です。PHCは、途上国の保健において第一次的保健医療サービスの重要性を明示したものですが、それだけに留まるものではありません。住民ニーズに即し、さらに最も必要とされているニーズを優先した、そして現地で利用可能な技術を最大限に用いた保健サービスというものです。これは先進国型保健システム・医学モデルの導入を主としてきたそれまでの国際支援からの大きな転換となりました。

2000年に国際連合で採択されたミレニアム開発目標(MDGs)では、8つの目標のうち3つが直接的に保健に関わる課題(乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康の改善、HIV/AIDS、マラリアその他の疾病の蔓延防止)となっています。このように保健に関わる課題が大きく取り上げられた背景には、発展途上国における貧困と疾病(ill-health)の悪循環という問題があります。健康(health)は途上国開発の結果でもあり、またそのインプットでもあります。このような関係から、貧困から健康状態の悪化・罹患(ill-health)、また疾病からの貧困化という悪循環が途上国開発の大きな負担、足かせとなっているのです。発展途上国における保健の目的は、人々の健康状態の改善、疾病の抑制であり、それは、今日、途上国の開発そして貧困削減にむけた取り組みの中心的な要素の一つとして捉えられています。

このように途上国開発における保健問題の重要性は強く認識されているものの、その改善にむけた資源(資金、人材、物資)は慢性的に不足しています。この資源をいかに増強していくのか、という問題は途上国支援の重要な課題となっています。さらに、限られた資源を有効に利用し、人々のニーズに即した保健サービス、そして人々、特に貧困層がアクセスできる保健サービスを提供するために、途上国における保健サービス、保健システムの改善・強化も取り組まなくてはならない重要な課題です。
内村 弘子

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