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地域研究会
途上国における自然災害と農村経済変容-パキスタンの事例を中心に-
報告要旨
地震や洪水といった自然災害は、低所得開発途上国においてとりわけ深刻な損失を家計や地域経済にもたらす。さまざまな貯え・備えが不足し、そもそもの生活水準が低いがゆえにわずかな厚生の低下も危機的な結果となり得るのがこのような経済だからである。低所得途上国においても、家計固有に生じる経済ショック(病気、失業、家畜の盗難・病死など)は、様々なインフォーマルなリスクシェアリングを通じて、ある程度保険されていることが既存研究から明らかになっている。しかし大規模な自然災害には、村落内相互の保険だけでは十分に対応し切れない。ローカルな相互保険の下でイディオシンクラティックなショックの影響は一時的なものにとどまるのに対し、ローカルに保険し切れない経済ショックは家計や地域経済に長期的な損失をもたらす可能性が高い。本稿はこの長期的損失からの復興プロセスが、もとの均衡への単なる回復のプロセスとみなせるのか、それとも新たな均衡への移行の始まりと考えられるのかについて、2010年に大規模な洪水に見舞われたパキスタン農村の事例を中心に検討する。自然災害発生前の複数時点を調査したモノグラフ的情報や詳細な家計パネルデータだけではこの課題を分析することは難しいこと、災害前後の情報を集めてそれを解析し、その結果をさまざまな経済モデリングと組み合わせる実証アプローチが有効となる可能性を指摘する。
地震や洪水といった自然災害は、低所得開発途上国においてとりわけ深刻な損失を家計や地域経済にもたらす。さまざまな貯え・備えが不足し、そもそもの生活水準が低いがゆえにわずかな厚生の低下も危機的な結果となり得るのがこのような経済だからである。低所得途上国においても、家計固有に生じる経済ショック(病気、失業、家畜の盗難・病死など)は、様々なインフォーマルなリスクシェアリングを通じて、ある程度保険されていることが既存研究から明らかになっている。しかし大規模な自然災害には、村落内相互の保険だけでは十分に対応し切れない。ローカルな相互保険の下でイディオシンクラティックなショックの影響は一時的なものにとどまるのに対し、ローカルに保険し切れない経済ショックは家計や地域経済に長期的な損失をもたらす可能性が高い。本稿はこの長期的損失からの復興プロセスが、もとの均衡への単なる回復のプロセスとみなせるのか、それとも新たな均衡への移行の始まりと考えられるのかについて、2010年に大規模な洪水に見舞われたパキスタン農村の事例を中心に検討する。自然災害発生前の複数時点を調査したモノグラフ的情報や詳細な家計パネルデータだけではこの課題を分析することは難しいこと、災害前後の情報を集めてそれを解析し、その結果をさまざまな経済モデリングと組み合わせる実証アプローチが有効となる可能性を指摘する。
開催日時
2012年1月25日 (水曜) 15時00分~16時30分
会場
ジェトロ・アジア経済研究所 C22会議室
テーマ
途上国における自然災害と農村経済変容-パキスタンの事例を中心に-講師
黒崎卓(一橋大学経済研究所教授)
司会
川中 豪(ジェトロ・アジア経済研究所 地域研究センター)







